滋賀の文化財講座・レンズを通して見た仏像

 滋賀は「水」と「お寺」が多い県だと言われます。
 それ故、文化財もたくさん伝わっていて、これらの保存と公開については、行政や博物館がそれぞれ
 別個に取り組んできたそうです。

 先日、琵琶湖文化館において 「滋賀の文化財講座」 が始まりました。
 この文化財講座は

 「これまで一般に知られてこなかった文化財調査や修理事業の実際、保存上の知識などについて、行政と博物館の協働のもと、専門的・具体的な最新情報を県民に向けて積極的に発信していこうとする試み」

とのことで、5月から毎月1回開講されます。

 第1回目のテーマは 「レンズを通して見た仏像 -Photo of Buddha-」
 難度が高いと言われる仏像撮影の舞台裏が紹介されました。

 照明や角度などを工夫することで、仏像の制作時代や仏師による特徴などがよく理解できるように心配りをされていることがよく分かる講座でした。その模様を少し紹介します。

滋賀の文化財講座・レンズを通して見た仏像 講座は琵琶湖文化館で行われました。
 文化財に関心の高い方々が大勢参加されていました。

 最初に琵琶湖文化館職員の方から
 「仏像撮影の歴史」 「滋賀の仏像撮影」 について
 解説がありました。

 仏像撮影は文化財保護を目的として行われるわけですが、最近は「盗難対策」としても効果がある
とのことで、盗難後、市中に出回った仏像を特定して回収するなど、効果が出ているとのことでした。


滋賀の文化財講座・レンズを通して見た仏像 次に実際の撮影現場について、
 文化財写真家の寿福氏から説明を受けました。

 琵琶湖文化館展示室の奥には、撮影場所が
 設けられています。

 仏像は動くものではなく、撮影はそれほど難易度の高いものだと思ってこなかったのですが
お話を聞いて大きな誤解であることがよく分かりました。

 まず照明の使い方
 滋賀の文化財講座・レンズを通して見た仏像
 同じ仏像に違う角度から照明を当てて撮影した3枚の写真を例に、照明の当て方次第で大きく見え方が違う写真が出来ることを解説くださいました。
 左の写真から「上」 「正面」 「下」 から照明が当てられています。こちらの仏像の場合には、下からの照明が最適であることが分かります。

 次にレンズの使い方
 滋賀の文化財講座・レンズを通して見た仏像
 同じ仏像の表情を望遠レンズ(左:150mm)と広角レンズ(右:35mm)で撮影した写真を比べながら、できあがった写真では表情が異なることを解説くださいました。
 広角レンズはゆがみが発生するため、表情が実物と異なってしまうとのことで、被写体との距離をとってでも、望遠レンズで撮影するとのことです。
 確かに右の写真は仏像の表情に違和感が残ります。


 このように、照明やレンズで仏像の見え方に違いがあるため、撮影時には仏像の制作者がイメージした仏像の表情を推し量りながら撮影するため、よく悩むそうです。

 そのほか、最近主流になっているデジタルカメラについてのお話がありました。画像を容易に加工出来るため、撮影者の倫理観が問われていると、撮影現場でのモラルについて説得力あるお話がありました。

滋賀の文化財講座・レンズを通して見た仏像 実物の仏像を使って、撮影のデモンストレーションも
 見せて頂くことが出来ました。

 
 当初仏像撮影に対して抱いていたイメージは一変し、動かないもの、不変のものであるが故に、どれほど撮影に力量が問われるかがよくわかる講座でした。
 また、写真撮影の醍醐味を新たにできた講座でもありました。



 講座全体を通して、関係者の文化財保護のご苦労を感じ取ることができました。

 滋賀の文化財講座は9月まで毎月1回行われています。
 次回は6月30日(土) 「古経典の美とこころ-緊急調査からの速報-」 です。

 他の講座、申込先など詳しいことは
 「知れば知るほど奥深い滋賀の文化財講座」の開催について(滋賀県政eしんぶん)をご覧ください。


同じカテゴリー(滋賀の文化財講座)の記事画像
滋賀の文化財講座・県指定文化財の誕生-成菩提院・兜率天曼荼羅
滋賀の文化財講座・県指定矢川神社楼門解体修理
第2回講座「古経典の美とこころ-緊急調査からの速報-」
同じカテゴリー(滋賀の文化財講座)の記事
 滋賀の文化財講座・県指定文化財の誕生-成菩提院・兜率天曼荼羅 (2007-08-30 22:30)
 滋賀の文化財講座・県指定矢川神社楼門解体修理 (2007-08-23 20:00)
 第2回講座「古経典の美とこころ-緊急調査からの速報-」 (2007-07-09 17:22)

2007年06月15日 Posted by滋賀の文化財 at 09:08 │Comments(5)滋賀の文化財講座

この記事へのコメント
仏像の表情、本当に違いますね。参考になりました。
Posted by 仏像ファン at 2007年06月16日 11:44
>仏像ファン様
ご覧いただきありがとうございます。
ここまで表情が違うことに本当に驚きました。
Posted by 滋賀咲くブログスタッフ at 2007年06月16日 17:59
今まで全体撮影で広角で撮っていたのですが
撮り方やレンズ選びで変る事を知り、勉強になりました。
Posted by 湖東 at 2007年06月19日 12:32
>湖東様
コメントが遅くなり大変失礼しました。
写真はちょっとしたことでいろいろ工夫出来るようです。
是非いろいろお試しください。
Posted by 滋賀咲くブログスタッフ at 2007年07月04日 16:21
最近ライフワークに仏像や石仏を撮影するようになりました。
このページを見させていただいて望遠(デジタルなので標準レンズも中望遠みないになってしまいますが・・・・)で撮る事など知ることができました。
しかしながらフラッシュ&三脚禁の場所が多く試行錯誤の連続です。

仏欲ならず望遠レンズがほしいという物欲も沸いてきそうです。
Posted by Ω200 at 2009年03月29日 12:54
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。