滋賀の文化財講座・県指定文化財の誕生-成菩提院・兜率天曼荼羅
「これまで一般に知られてこなかった文化財調査や修理事業の実際、保存上の知識などについて、行政と博物館の協働のもと、専門的・具体的な最新情報を県民に向けて積極的に発信していこうとする試み」
として5月から始まった「滋賀の文化財講座」も今回で四度目。8月25日に滋賀県立琵琶湖文化館にて開催されました。
今回の講座は、
『県指定文化財の誕生-成菩提院(じょうぼだいいん)・
兜率天曼荼羅(とそつてんまんだら)を中心に-』
をテーマに、滋賀県教育委員会事務局文化財保護課の
古川主任技師よりお話があり、関心のある多くの方々が受講され
ました。(主に美術工芸品について)
私たちは気軽に「ぶんかざい」と言っていますが・・・
国の場合、文化財を指定する基準となる文化財保護法の中で、文化財は
貴重な国民的財産(第4条)として、わが国の歴史や文化を正しく理解するために必要なものであり、将来の文化の向上発展の基礎となるもの。
重要な文化財として指定(第27条)されると、一定の制限を課し、助成を行うなどして、保存と活用のために必要な措置を講じることが出来る。
と書いています。
滋賀県でも概ね国に準じ、滋賀県文化財保護条例を昭和31年12月25日に制定しています。
これは近畿2府4県の中では和歌山県に次いで2番目で、意外にも文化財王国?!の奈良県では52年、京都でも56年の制定など、地方自治体によってその足並みは様々です。これを見ても、滋賀県の文化財に対する取り組みが、早くから行われてきたことが良く分かりますね。
驚いたのが、都道府県によって指定文化財の名称が異なるそうなんです!
一番オーソドックスに・・・県指定(有形)文化財→ 滋賀、京都、奈良など多数
(滋賀県はスタンダードをいっています。)
紛らわしいのは・・・・・・・・・県重要文化財→福島、群馬、神奈川、岐阜、広島、岡山、佐賀の7県
(国の「重要文化財」と混同してしまうのは私だけですか?)
まさしく文字の通り・・・・・・県重宝、県宝→青森、長野の2県
(分かりやすくていいですね。読み方は「ジュウホウ」「ケンポウ」・・・県宝はパソコン
では漢字に一発変換出来ませんのであしからず)
大切にされている気がする・・・県指定保護文化財、県保護有形文化財→鳥取、高知の2県
旅先で看板を見つけたら、滋賀県との呼び方の違いを、お友達に教えてあげて下さい。ちょっぴり自慢できる豆知識です。
滋賀県で文化財に指定されるその基準は以下の通りです。(国指定文化財の指定基準に準じる)
【彫刻・絵画の部】 一 各時代の遺品のうち制作優秀で滋賀県の文化史上貴重なもの
二 滋賀県の絵画・彫刻史上特に意義のある資料となるもの
三 題材、品質、形状または技法等の点で顕著な特異性を示すもの
四 特殊な作者、流派又は地方様式等を代表する顕著なもの
五 渡来品で滋賀県の文化にとって特に意義のあるもの
→滋賀県にとって重要かつ貴重であるもの
また、滋賀県の地域性を重視して指定された例もあるそうです。
滋賀県指定文化財の栄誉ある第1号は御覧の通り!
絵画の部(第1号) 彫刻の部(第1号) 工芸品の部(第1号)
絹本著色 木造僧形八幡神坐像 1躯 木造相撲人形力士2
恵心僧都像1幅 女神坐像 1躯 行司1
(大津市・聖衆来迎寺) (栗東市・金勝寺) (野洲市・御上神社)
「いずれも優秀で貴重かつ歴史的意義のある作品であり、『国の重要文化財』となってもおかしくない、レベルの高さ」だと、古川さんは言っておられました。これらの作品は展覧会に“引っ張りダコ”で、全国の様々な博物館で展示され、滋賀の文化財の素晴らしさをアピールしてくれています。
(ちなみに、これらはよく琵琶湖文化館で展示されていますヨ。要チェック!)
滋賀県指定文化財の指定総数は
・絵画(39件) ・彫刻(77件) ・工芸品(51件) ・書跡・典籍・古文書(66件)
・歴史資料(6件) ・考古資料(9件)
となっており(平成19年6月1日現在)、特徴としては仏教美術が多数を占めています。
またこれらは、国指定重要文化財となって県指定が解除される例もあり、最近では
<平成17年>木造阿弥陀如来立像(大津市・西勝寺)
木造聖観音立像(愛荘町・仏心寺)
<平成19年> 木造十一面観音立像(甲賀市・誓光寺)
が、「県民の宝」から「全国民の宝」として大切にされています。
今後の課題としては、文化財の宝庫である滋賀県では指定対象候補が多すぎるという嬉しい悲鳴も悩みと言えば悩み。比叡山延暦寺を本山とする天台系さらには禅宗系、真宗系の遺品など、仏教美術作品を中心に指定候補となる優れた文化財が多数存在し、これらを如何に調整しながら指定を行うか。また、指定対象の多様化についても、頭を悩ますところだと、古川さんは言っておられました。
県では教育委員会文化財保護課の皆さんが、また国では文化庁が、有識者の方々と共に調査・研究を行い、地元の皆さんと調整を図りながら、持てる知識を総動員し、文化財のこと、一生懸命考えてお仕事をして下さっています。その仕事内容の複雑さやご苦労を考えると、文化財に対する有り難さも倍増となりました。
では、そのような目で平成18年に新たに県指定文化財となった「兜率天曼荼羅(とそつてんまんだら)」(米原市 成菩提院所蔵)を見てみましょう。
指定: 平成18年3月17日 絵第39号
※絵画部門では最新の指定
法量: 縦160.2センチ 横113.4センチ
品質/形状: 絹本著色(一副一鋪) 掛幅装
お話によると、この大きさで「一副一鋪」(1枚の絵絹に
1枚の絵)は大変珍しいとのこと。
多くは「三副一鋪」(縦に3分割して絵絹を貼り合わせ)が
主流で、それだけでも貴重!だそうです。
大きい写真はこちらからどうぞ!
●先ずは中心におられます『弥勒菩薩(みろくぼさつ)』について。
「現在、兜率天において修行中の身で、釈迦が入滅した56億7千万年後に、私たち
の世界に下りてきて、龍華樹の下で、説法を行って民衆を救済する」有り難い仏さ
まのことです。
●描かれている兜率天浄土は
・五百万億の天子(神々)が造作した宝宮 ・五百億の諸天女が妙音を奏でる
・七重の垣をなす七宝や並木の荘厳 ・摩尼宝珠で飾られた四十九重の宮殿(四十九院)
・庭園に宝池
という、想像も出来ない圧倒されるほどの豪華な様子であるそうです。・・・す・すごい。
↓ 弥勒菩薩の住む
摩尼宝殿 ↓ 踊り舞う天女たち
●このように、本当はきらびやかな兜率天浄土を描いているのですが・・・
保存状況: 本紙→絹の欠損・虫損、折れ
顔料→浮き、剥落
表具→折れ、欠損、破れ/八双・軸木の露出
素晴らしい作品であるにも関わらず、長期の展示に耐えうること
が出来ないほどの状態で、これ以上放っておけない、近い将来
の修理が必要でその保全の意味からも、文化財に指定された
ことは大変意義があると言っておられました。
●特徴的なことは
墨の線で下書き→色塗り 屋根がウロコ状でとても 視点のバラツキ
→朱色で輪郭を仕上げ 丁寧に塗り分けられている (建物を上から見たり下から
装身具は金泥 見たりして描いている)
などなど、多数見所のある曼荼羅です。
●気になる制作年代については
・弥勒菩薩の面貌 → 左右非対称
・筆致 → 線描が滞りがち
・画絹の大きさ → 一副一鋪
などから、推定14世紀後半(南北朝時代)頃であると、考えられています。
県指定文化財としての評価理由としては、
・造形的な評価
写し崩れや線描に硬さが見られるが、この時代の作としては丁寧に仕上がっている。
・画題の稀少性と制作時期の評価
現存する兜率天曼荼羅の作例は極めて少なく、特に、鎌倉・南北朝期に遡る作例は全国でも
他に5点しか見つかっておらず、本図はその数少ない一例として、仏教絵画史上貴重である。
などの理由から、平成18年に新たに県指定文化財として加えられました。
●課題としては、
・制作背景と伝来に関する課題(兜率天曼荼羅と天台宗との関係・成菩提院に伝来した経緯)
・図像的な課題(浄土の情景と経文との対応関係・祖本となる図像の解明・阿弥陀浄土図からの影響関係)
など、今後も調査・研究する必要があるようです。
と、ここまではスライドでの説明でしたが、、、
ナント!最後に!「少しの時間なら」と実物を!特別に!特別室で!見ることができました!!
(現在「兜率天曼荼羅」は琵琶湖文化館に寄託されています)
実物を前に、緊張気味に見入る参加者たち
(くれぐれも絵のすぐそばで、咳をしたり、お話しを
したりしないように、注意がありました。)
素人ながら、修復の必要性を確かに感じました・・・
(「修復」とは「現状維持!補修・補色は一切しない」そうです)
文化財の修復には、大変なお金がかかるものですから、所有者(地元の皆さん)にとっても負担が大きく、県指定文化財では費用の60%が補助されるそうです。しかし、文化財の宝庫である滋賀県では、それだけ「修理待ち」の文化財も多数あるわけで・・・文化財を「県民の宝」として県費(税金)で賄うのですから、文化財の指定にも保存にもそれは慎重に審査されるべき事柄なのです。
「文化財保護行政」と言っても、本当に大変なお仕事ですね。
★余談ですが・・・
参加されていた「仲良しおばあさま3人組」にお話を伺ったところ
「昔はお寺の世話役さんが、曼荼羅やら掛け軸やらをクルクルクルッと巻いて
上下を揃えるために縦にしてコンコンと(左図)してたもんやがな」
「そうそう、それした後はもちろん剥がれた絵の具やら何やら畳の上に落ちるし、
それをセロテープでちょちょいとキレイにしてたもんや・・・」
「この講座を聞いてしもたら滅相もない話やな。大事にせんとあかんな・・・」
そうですよ!おばあさま!世話役さんに、くれぐれもコンコンとしないように、よろしくお伝え下さい(笑)
私は、このことを、古川さんには、恐ろしくて、言えません、デシタ・・・ショックやろうなぁ・・・
さて、次回、第5回の「知れば知るほど奥深い滋賀の文化財講座」は、『葛川参籠の舞台-重文明王院護摩堂・庵室解体修理-』と題し、9月29日(土)午後1:30より滋賀県立琵琶湖文化館(TEL077-522-8179)で開催されます。
受講は無料(但し入館料が別途300円必要)ですので、みなさんお気軽にご参加下さい。
として5月から始まった「滋賀の文化財講座」も今回で四度目。8月25日に滋賀県立琵琶湖文化館にて開催されました。
今回の講座は、
『県指定文化財の誕生-成菩提院(じょうぼだいいん)・
兜率天曼荼羅(とそつてんまんだら)を中心に-』
をテーマに、滋賀県教育委員会事務局文化財保護課の
古川主任技師よりお話があり、関心のある多くの方々が受講され
ました。(主に美術工芸品について)
私たちは気軽に「ぶんかざい」と言っていますが・・・
国の場合、文化財を指定する基準となる文化財保護法の中で、文化財は
貴重な国民的財産(第4条)として、わが国の歴史や文化を正しく理解するために必要なものであり、将来の文化の向上発展の基礎となるもの。
重要な文化財として指定(第27条)されると、一定の制限を課し、助成を行うなどして、保存と活用のために必要な措置を講じることが出来る。
と書いています。
滋賀県でも概ね国に準じ、滋賀県文化財保護条例を昭和31年12月25日に制定しています。
これは近畿2府4県の中では和歌山県に次いで2番目で、意外にも文化財王国?!の奈良県では52年、京都でも56年の制定など、地方自治体によってその足並みは様々です。これを見ても、滋賀県の文化財に対する取り組みが、早くから行われてきたことが良く分かりますね。
驚いたのが、都道府県によって指定文化財の名称が異なるそうなんです!
一番オーソドックスに・・・県指定(有形)文化財→ 滋賀、京都、奈良など多数
(滋賀県はスタンダードをいっています。)
紛らわしいのは・・・・・・・・・県重要文化財→福島、群馬、神奈川、岐阜、広島、岡山、佐賀の7県
(国の「重要文化財」と混同してしまうのは私だけですか?)
まさしく文字の通り・・・・・・県重宝、県宝→青森、長野の2県
(分かりやすくていいですね。読み方は「ジュウホウ」「ケンポウ」・・・県宝はパソコン
では漢字に一発変換出来ませんのであしからず)
大切にされている気がする・・・県指定保護文化財、県保護有形文化財→鳥取、高知の2県
旅先で看板を見つけたら、滋賀県との呼び方の違いを、お友達に教えてあげて下さい。ちょっぴり自慢できる豆知識です。
滋賀県で文化財に指定されるその基準は以下の通りです。(国指定文化財の指定基準に準じる)
【彫刻・絵画の部】 一 各時代の遺品のうち制作優秀で滋賀県の文化史上貴重なもの
二 滋賀県の絵画・彫刻史上特に意義のある資料となるもの
三 題材、品質、形状または技法等の点で顕著な特異性を示すもの
四 特殊な作者、流派又は地方様式等を代表する顕著なもの
五 渡来品で滋賀県の文化にとって特に意義のあるもの
→滋賀県にとって重要かつ貴重であるもの
また、滋賀県の地域性を重視して指定された例もあるそうです。
滋賀県指定文化財の栄誉ある第1号は御覧の通り!
絵画の部(第1号) 彫刻の部(第1号) 工芸品の部(第1号)
絹本著色 木造僧形八幡神坐像 1躯 木造相撲人形力士2
恵心僧都像1幅 女神坐像 1躯 行司1
(大津市・聖衆来迎寺) (栗東市・金勝寺) (野洲市・御上神社)
「いずれも優秀で貴重かつ歴史的意義のある作品であり、『国の重要文化財』となってもおかしくない、レベルの高さ」だと、古川さんは言っておられました。これらの作品は展覧会に“引っ張りダコ”で、全国の様々な博物館で展示され、滋賀の文化財の素晴らしさをアピールしてくれています。
(ちなみに、これらはよく琵琶湖文化館で展示されていますヨ。要チェック!)
滋賀県指定文化財の指定総数は
・絵画(39件) ・彫刻(77件) ・工芸品(51件) ・書跡・典籍・古文書(66件)
・歴史資料(6件) ・考古資料(9件)
となっており(平成19年6月1日現在)、特徴としては仏教美術が多数を占めています。
またこれらは、国指定重要文化財となって県指定が解除される例もあり、最近では
<平成17年>木造阿弥陀如来立像(大津市・西勝寺)
木造聖観音立像(愛荘町・仏心寺)
<平成19年> 木造十一面観音立像(甲賀市・誓光寺)
が、「県民の宝」から「全国民の宝」として大切にされています。
今後の課題としては、文化財の宝庫である滋賀県では指定対象候補が多すぎるという嬉しい悲鳴も悩みと言えば悩み。比叡山延暦寺を本山とする天台系さらには禅宗系、真宗系の遺品など、仏教美術作品を中心に指定候補となる優れた文化財が多数存在し、これらを如何に調整しながら指定を行うか。また、指定対象の多様化についても、頭を悩ますところだと、古川さんは言っておられました。
県では教育委員会文化財保護課の皆さんが、また国では文化庁が、有識者の方々と共に調査・研究を行い、地元の皆さんと調整を図りながら、持てる知識を総動員し、文化財のこと、一生懸命考えてお仕事をして下さっています。その仕事内容の複雑さやご苦労を考えると、文化財に対する有り難さも倍増となりました。
では、そのような目で平成18年に新たに県指定文化財となった「兜率天曼荼羅(とそつてんまんだら)」(米原市 成菩提院所蔵)を見てみましょう。
指定: 平成18年3月17日 絵第39号
※絵画部門では最新の指定
法量: 縦160.2センチ 横113.4センチ
品質/形状: 絹本著色(一副一鋪) 掛幅装
お話によると、この大きさで「一副一鋪」(1枚の絵絹に
1枚の絵)は大変珍しいとのこと。
多くは「三副一鋪」(縦に3分割して絵絹を貼り合わせ)が
主流で、それだけでも貴重!だそうです。
大きい写真はこちらからどうぞ!
●先ずは中心におられます『弥勒菩薩(みろくぼさつ)』について。
「現在、兜率天において修行中の身で、釈迦が入滅した56億7千万年後に、私たち
の世界に下りてきて、龍華樹の下で、説法を行って民衆を救済する」有り難い仏さ
まのことです。
●描かれている兜率天浄土は
・五百万億の天子(神々)が造作した宝宮 ・五百億の諸天女が妙音を奏でる
・七重の垣をなす七宝や並木の荘厳 ・摩尼宝珠で飾られた四十九重の宮殿(四十九院)
・庭園に宝池
という、想像も出来ない圧倒されるほどの豪華な様子であるそうです。・・・す・すごい。
↓ 弥勒菩薩の住む
摩尼宝殿 ↓ 踊り舞う天女たち
●このように、本当はきらびやかな兜率天浄土を描いているのですが・・・
保存状況: 本紙→絹の欠損・虫損、折れ
顔料→浮き、剥落
表具→折れ、欠損、破れ/八双・軸木の露出
素晴らしい作品であるにも関わらず、長期の展示に耐えうること
が出来ないほどの状態で、これ以上放っておけない、近い将来
の修理が必要でその保全の意味からも、文化財に指定された
ことは大変意義があると言っておられました。
●特徴的なことは
墨の線で下書き→色塗り 屋根がウロコ状でとても 視点のバラツキ
→朱色で輪郭を仕上げ 丁寧に塗り分けられている (建物を上から見たり下から
装身具は金泥 見たりして描いている)
などなど、多数見所のある曼荼羅です。
●気になる制作年代については
・弥勒菩薩の面貌 → 左右非対称
・筆致 → 線描が滞りがち
・画絹の大きさ → 一副一鋪
などから、推定14世紀後半(南北朝時代)頃であると、考えられています。
県指定文化財としての評価理由としては、
・造形的な評価
写し崩れや線描に硬さが見られるが、この時代の作としては丁寧に仕上がっている。
・画題の稀少性と制作時期の評価
現存する兜率天曼荼羅の作例は極めて少なく、特に、鎌倉・南北朝期に遡る作例は全国でも
他に5点しか見つかっておらず、本図はその数少ない一例として、仏教絵画史上貴重である。
などの理由から、平成18年に新たに県指定文化財として加えられました。
●課題としては、
・制作背景と伝来に関する課題(兜率天曼荼羅と天台宗との関係・成菩提院に伝来した経緯)
・図像的な課題(浄土の情景と経文との対応関係・祖本となる図像の解明・阿弥陀浄土図からの影響関係)
など、今後も調査・研究する必要があるようです。
と、ここまではスライドでの説明でしたが、、、
ナント!最後に!「少しの時間なら」と実物を!特別に!特別室で!見ることができました!!
(現在「兜率天曼荼羅」は琵琶湖文化館に寄託されています)
実物を前に、緊張気味に見入る参加者たち
(くれぐれも絵のすぐそばで、咳をしたり、お話しを
したりしないように、注意がありました。)
素人ながら、修復の必要性を確かに感じました・・・
(「修復」とは「現状維持!補修・補色は一切しない」そうです)
文化財の修復には、大変なお金がかかるものですから、所有者(地元の皆さん)にとっても負担が大きく、県指定文化財では費用の60%が補助されるそうです。しかし、文化財の宝庫である滋賀県では、それだけ「修理待ち」の文化財も多数あるわけで・・・文化財を「県民の宝」として県費(税金)で賄うのですから、文化財の指定にも保存にもそれは慎重に審査されるべき事柄なのです。
「文化財保護行政」と言っても、本当に大変なお仕事ですね。
★余談ですが・・・
参加されていた「仲良しおばあさま3人組」にお話を伺ったところ
「昔はお寺の世話役さんが、曼荼羅やら掛け軸やらをクルクルクルッと巻いて
上下を揃えるために縦にしてコンコンと(左図)してたもんやがな」
「そうそう、それした後はもちろん剥がれた絵の具やら何やら畳の上に落ちるし、
それをセロテープでちょちょいとキレイにしてたもんや・・・」
「この講座を聞いてしもたら滅相もない話やな。大事にせんとあかんな・・・」
そうですよ!おばあさま!世話役さんに、くれぐれもコンコンとしないように、よろしくお伝え下さい(笑)
私は、このことを、古川さんには、恐ろしくて、言えません、デシタ・・・ショックやろうなぁ・・・
さて、次回、第5回の「知れば知るほど奥深い滋賀の文化財講座」は、『葛川参籠の舞台-重文明王院護摩堂・庵室解体修理-』と題し、9月29日(土)午後1:30より滋賀県立琵琶湖文化館(TEL077-522-8179)で開催されます。
受講は無料(但し入館料が別途300円必要)ですので、みなさんお気軽にご参加下さい。
2007年08月30日 Posted by滋賀の文化財 at 22:30 │Comments(2) │滋賀の文化財講座
この記事へのコメント
指定文化財の呼び名が県によって違うとは・・・。知りませんでした。
滋賀県は貴重な文化財、歴史的建造物、文化・風習や自然の残る貴重な地域だと
思います。文化財の保護にも関係者の皆さんの地道な努力があるんですね。。。
「トントン」はいかんですね^^;
記事楽しみにしております。
滋賀県は貴重な文化財、歴史的建造物、文化・風習や自然の残る貴重な地域だと
思います。文化財の保護にも関係者の皆さんの地道な努力があるんですね。。。
「トントン」はいかんですね^^;
記事楽しみにしております。
Posted by マツザキ@湖岸のほとり at 2007年08月31日 09:09
>湖岸のほとり様
コメントありがとうございます。
すっかりお返事が遅れてしまいました。(^^;)
これからもよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
すっかりお返事が遅れてしまいました。(^^;)
これからもよろしくお願いします。
Posted by 滋賀の文化財 at 2007年10月06日 18:14